トークン化とは?金融の分野での意味
金融の分野でいうトークン化は、金融資産をブロックチェーン上でデジタル形式で表し、取引できるようにするプロセスを指します。この記事では、その意味、対象となる資産、期待される効果と課題を順に整理します。
対象になる資産には、銀行預金や有価証券などがあります。銀行預金をトークン化したものは「預金トークン」、有価証券をトークン化したものは「セキュリティトークン」と呼ばれます。
同じ「トークン化」という言葉は、カード番号などの保護や自然言語処理でも使われます。
金融資産をブロックチェーン上でデジタル形式で表す手続き
日本総合研究所のリサーチ・フォーカスは、金融資産のトークン化を「金融資産をブロックチェーン上で、デジタル形式で表章・取引するプロセス」と説明しています(日本総合研究所「金融資産のトークン化により期待される効果と今後の課題」)。
金融庁の「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回会合では、米国債、社債、株式、不動産、商品といった資産でトークン化の取組が行われていると説明されました(金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回議事録、令和8年9月30日開催)。
同じ会合では、トークン化資産の発行額が急激に増加している状況にあるとも説明されています(金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回議事録)。
データ保護や自然言語処理でも同じ言葉が使われる
データ保護のトークン化は、機密データを元のデータにマッピングされた機密性のないデジタルデータ(トークン)に変換して情報を保護するプロセスです(IBM「トークン化とは?仕組み・メリットをわかりやすく解説」)。
自然言語処理(NLP)のトークン化は、テキストを意味のある最小単位の「トークン」に分割する処理とされています(SHIFT「AI用語集 トークン化」)。
3つの用法を表にまとめます。
| 分野 | トークン化が指すこと |
|---|---|
| 金融(ブロックチェーン) | 金融資産をブロックチェーン上でデジタル形式で表章・取引するプロセス |
| データ保護 | 機密データを、元のデータに対応づけられた機密性のないトークンに置き換えること |
| 自然言語処理 | テキストを意味のある最小単位のトークンに分割する処理 |
トークン化の対象と種類(預金トークン・セキュリティトークン)

日本総合研究所のリサーチ・フォーカスは、金融資産のトークン化として、銀行預金をトークン化する「預金トークン」と、有価証券をトークン化する「セキュリティトークン」などが存在するとしています(日本総合研究所「金融資産のトークン化により期待される効果と今後の課題」)。
| 種類 | トークン化の対象 |
|---|---|
| 預金トークン(トークン化預金) | 銀行預金 |
| セキュリティトークン | 有価証券 |
預金トークン(トークン化預金)とは
預金トークンは、銀行預金をトークン化したものです。海外の活用事例として、米大手行のJPMorgan ChaseやCitiによる預金トークンが挙げられています(日本総合研究所「金融資産のトークン化により期待される効果と今後の課題」)。
国内では、金融庁が令和8年4月3日に、決済高度化プロジェクト(PIP)の3号案件の支援決定を発表しました。内容は、トークン化預金を異なる銀行のお客様間で移転する場合に必要となる、銀行間決済の円滑化を図る実証実験です(金融庁「片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要」令和8年4月3日)。
同じ会見では、日本銀行が日銀当座預金のトークン化とその活用に向けたサンドボックスプロジェクトを行う予定だと承知している、と述べられています。金融庁と日本銀行は、情報や知見を共有しながら取り組むとされています(金融庁「片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要」)。
セキュリティトークンとは
セキュリティトークンは、有価証券をトークン化したものです(日本総合研究所「金融資産のトークン化により期待される効果と今後の課題」)。
同リサーチ・フォーカスは、海外の事例として、さまざまなトークン化資産をやりとりする統合台帳(Unified Ledger)構想も挙げています。
預金トークンは預金、セキュリティトークンは有価証券が対象です。
トークン化で期待される効果と指摘されている課題

以下の効果と4つの課題は、同リサーチ・フォーカスの記述に基づきます。
期待される効果:自動化・24時間取引・小口化・決済期間の短縮
金融資産をトークン化すると、あらかじめ規定した取引を自動化する「プログラマビリティ機能」を活用できるようになるとされています(日本総合研究所「金融資産のトークン化により期待される効果と今後の課題」)。
この機能を前提に、次の効果が期待可能とされています。
- 取引処理コストや管理コストの軽減
- 24時間取引の実現
- 金融商品の小口分散
- 決済期間の短縮
課題:既存インフラとの接続、運用リスク、法規制、流動性リスク
同リサーチ・フォーカスは、実用化に向けた課題として次の4点を挙げています(日本総合研究所「金融資産のトークン化により期待される効果と今後の課題」)。
- 既存の金融インフラの代替可能性・相互運用性:既存のインフラを即時に代替することは困難で、併存する場合は複数のインフラを安定的に接続・運用する必要がある
- オペレーショナル・リスク、ガバナンス:新たな金融プラットフォームとして確立すればトラブル時の影響が甚大になり、外部事業者との接続を前提とするためサードパーティ・リスクも課題となる
- 法規制・監督態勢の整備:整備が不十分な法域があり、クロスボーダー活用の障壁になる
- 金融リスク(流動性リスク):トークン化資産と参照対象の原資産との満期の違いにより償還できなくなることや、取引の自動化によって機械的な投げ売りが生じることなどのリスクがある
金融庁が示すトークン化の位置づけ
金融庁は令和8年9月30日に「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の第1回会合を開きました。座長は片山内閣府特命担当大臣(金融)です(金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回議事録)。
堀本資産運用・保険監督局長は、事務局として重視したい観点を3つ挙げました。1つ目は、プログラマビリティ等を活用した実際の取引の発展と一体となったオンチェーン金融の展開です。
この1つ目の観点の中で、資産のトークン化といった資産運用の高度化や、物流・商流と決済の一体的な連携による生産性の向上が例に挙げられました。2つ目は、オンチェーン決済とオフチェーン決済のベストミックスの追求です。3つ目は、決済基盤として信頼される安定性や安全性が確保される必要があるという点です(金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回議事録)。
金融庁のフォーラムでは、オンチェーン決済は24時間利用可能な即時決済で、透明性やプログラム可能性にメリットがあると説明されました。一方で、パブリック型では処理容量の制約や手数料等の懸念があるとされています(金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回議事録)。
同じ議事録では、誤送信や不正取引の取消しや資金回収が困難になる可能性にも触れられています。
金融庁は、環境整備に係る研究会などでも関係する論点を検討し、来年初までに中間整理とロードマップを作成する作業を進めたいとしています(金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回議事録)。
データ保護でいうトークン化との違い

クレジットカード番号などの保護で使われるトークン化は、ブロックチェーン上で資産を表す金融のトークン化とは別のものです。
機密データを意味のない値に置き換える仕組み
トークンは他の資産や情報の識別子として機能する文字の集合です。例として、機密レポート内の数字45,500,000米ドルをトークン「ot&14%Uyb」に置き換える場合が挙げられています(IBM「トークン化とは?仕組み・メリットをわかりやすく解説」)。
同解説では、元のデータとトークンの対応づけは、安全なデータ・ストアに保存されたトークン・ボールトで管理されます。トークン自体は機密情報ではなく、データ・ボールトに接続しないと役に立たないと説明されています(IBM「トークン化とは?仕組み・メリットをわかりやすく解説」)。
また、フォーマット保持トークンは、置き換えられるデータと同じ形式を持ちます。クレジットカード番号1234-1234-1234-1234の形式のトークンが8493-9756-1986-6455である、という例も示されています(IBM「トークン化とは?仕組み・メリットをわかりやすく解説」)。
暗号化との違い
トークン化と暗号化の違いは次のように整理されています。トークン化は、機密データを別のボールトに保存されているランダムなプレースホルダー値に置き換えます。暗号化は、数学アルゴリズムでデータをスクランブルし、適切なキーで元に戻します(Snowflake「データセキュリティにおけるトークン化とは」)。
| 項目 | トークン化 | 暗号化 |
|---|---|---|
| データの変換 | ボールトに保存されたランダムな値に置き換える | 数学アルゴリズムでスクランブルする |
| 元に戻す方法 | セキュアなトークンボールトへのアクセス権が必要 | 正しい復号キーとアルゴリズムがあれば元に戻せる |
同解説では、トークンのセキュリティはボールトのセキュリティに全面的に依存するとされています。暗号化はキーの管理に依存し、通常、侵害は特定のキーで暗号化されたデータにのみ影響するとされています(Snowflake「データセキュリティにおけるトークン化とは」)。
データ保護のトークン化は機密データの置き換え、金融のトークン化は資産のデジタル形式での表章と整理できます。

