KYCとは「顧客を知る」ための確認手続きのこと
KYCは「Know Your Customer」の略で、直訳すると「顧客を知る」という意味です(TRUSTDOCK「KYCとは?」)。
この記事では、KYCの意味、本人確認との関係、マネーロンダリング対策とのつながり、暗号資産を模したトークンによる金融庁の実証実験、CIP・CDD・継続的モニタリングという構成要素、eKYCの定義を順に整理します。
KYCは何の略で、どういう意味か
KYCは「Know Your Customer」の頭文字で、ネクスウェイは「Know Your Customer(顧客を知る)」の略称であり、本人確認手続きのことを指すと説明しています(ネクスウェイ「KYCとは?」)。
金融機関が顧客の身元確認を行うプロセスを指す、という説明もあります(LSEG「顧客確認(KYC)」用語集)。
国際的な文書では、バーゼル銀行監督委員会が2001年10月に「銀行の顧客確認」というガイダンスを公表しています。委員会の議長であるマクドノー氏は、体系的な顧客確認手続きを「銀行のリスク管理の必須要素」と述べています(金融庁「銀行の顧客確認に関するガイダンス」)。
言葉の意味に幅があるといわれる理由
KYCという言葉には「意味のゆらぎ」があり、人や立場、業界によって指す範囲が変わると説明されています(TRUSTDOCK)。
金融業界では、口座開設時に行う本人確認業務を指す場合があります。反社チェックなどのバックグラウンドチェックや、継続的な顧客管理まで含めてKYCと呼ぶ場合もあります(TRUSTDOCK)。
KYCと本人確認の関係:身元確認と当人認証

本人確認は「身元確認」と「当人認証」の組み合わせから成るとされ、KYCの方策の一つと位置づけられています(TRUSTDOCKの解説)。
一方、エクスジェンの解説は、KYCは「顧客確認(本人確認)」を指し、その要素として「身元確認」と「当人認証」の2つがあるとしています(エクスジェン「KYCとeKYCの基礎知識」)。
身元確認とは
身元確認(Identity Proofing & Verification)は、申請者を一意に識別し、その実在性を確認することを指します(TRUSTDOCK)。
具体的には、属性情報を集めて申請者を識別します。集めた情報が真正で申請者自身のものであることを、本人確認書類で検証します(TRUSTDOCK)。
確認に使われる書類として、マイナンバーカードや運転免許証などの公的身分証が挙げられています(TRUSTDOCK)。
当人認証とは
当人認証(Authentication)は、不正アクセスやなりすましを防ぐため、サービス利用者が「あらかじめ登録された本人である」ことを確認するプロセスです(TRUSTDOCK)。
エクスジェンは、IAL を新規登録の際に行われる身元確認の強度、AAL を登録済みのユーザーがログインする際の当人認証の強度と説明しています。
エクスジェンの解説には、保証レベルの考え方も出てきます。身元確認の保証レベルをIAL、当人認証の保証レベルをAALと呼び、数字が大きいほど強度が高いことを意味するとされています。
KYCが求められる理由:マネーロンダリング対策との関係
KYCが行われる目的として、なりすましや不正利用の防止が挙げられています。詐欺、マネーロンダリング、テロ資金供与などの犯罪に巻き込まれないようにする目的もあるとされています(ネクスウェイ)。
LSEGの用語集は、KYCが詐欺、マネーロンダリング、テロ資金供与などのリスクから企業を保護することに役立つとしています。
KYCとAMLはどうつながるのか
AMLは「Anti-Money Laundering」の略で、マネーロンダリング対策を指します。KYCはAMLプログラムの基盤となる要素とされています(Chainalysis「KYCとは」)。
KYCは、金融機関のAMLポリシーの一環として定められた一連の手続きやガイドラインと説明されています(Oktaの解説)。
バーゼル委員会は、取引相手を知るための適切な管理と手続きが必要な理由を述べています。マネーロンダリング防止の法的要件に従うためだけでなく、より広く銀行の健全性の観点からも必要だとしています(金融庁)。
金融活動作業部会(FATF)は、マネーロンダリングやテロ資金供与などの金融犯罪対策の原則を定めており、各国のKYC手順の基盤になっているとされています(LSEG)。
バーゼル委員会も、自らの基準がFATFの「40の勧告」と整合性がとれるようにする意図を示しています(金融庁)。
暗号資産を模したトークンによる金融庁の実証実験

金融庁の実証実験に見るKYC済みアドレスの考え方
金融庁は令和8年3月13日に、「FinTech実証実験ハブ」の支援決定案件の実験結果を公表しました。暗号資産などを模したトークンを使い、金融機関による本人確認(KYC)が行われたことが示されているアドレスを保有する顧客等に、AMM機能を用いたサービスを提供する実験です。実験期間は令和7年6月から9月でした(金融庁「FinTech実証実験ハブ」支援決定案件の実験結果について)。
この実験では、仲介型金融機関が顧客のKYCを行ったうえで、KYC済みであることを示す「KYCトークン」をアドレスに付与します。KYC済みのアドレス間でのみ移転できる移転制限付トークンを使い、KYC済みの顧客等がAMMを利用します(金融庁)。
確認された技術的仕様には、次のものがあります(金融庁)。
- KYCトークンを付与した金融機関が、そのトークンを無効化または一時停止できること
- KYCトークンに、KYC実施時点での顧客ごとのリスクに応じた有効期限を設定できること
- 登録をしていない者によるKYCのみでは、移転制限付トークンの授受ができないこと
金融庁は、金融機関が顧客にKYCを行い、KYCトークンを送付することなどの措置について、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインで求められるリスク低減措置に照らして、リスクを低減させる方向に作用しうるものと考えられると回答しています(金融庁)。
KYCの構成要素:CIP・CDD・継続的モニタリング

KYCは通常、顧客本人確認プログラム(CIP)、カスタマーデューデリジェンス(CDD)、継続的なモニタリングという3つの主要な要素を含むとされています(Chainalysis)。
KYCはリスクベース・アプローチに基づいており、リスクの高い顧客にはより厳格な審査、リスクの低い顧客には簡素化された手続きが適用されると説明されています(Chainalysis)。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| CIP(顧客本人確認プログラム) | 口座開設時に氏名、生年月日、住所などの基本情報を集めて確認する。政府発行の身分証明書などを使う(Chainalysis)。 |
| CDD(カスタマーデューデリジェンス) | 顧客の身元、資金源、予想される取引パターンなどに基づき、各顧客のリスクプロファイルを評価する(Chainalysis)。 |
CDDはKYCの一要素であり、独立したプロセスではありません。KYC全体の中にあるリスク評価の層にあたります(Chainalysisの解説)。
LSEGの用語集は、KYCを一般的な本人確認の枠組み、CDDを顧客のリスクプロファイルに応じて実施するリスクベースのアプローチ、EDDをリスクの高い顧客に求められる追加的なチェックとモニタリングと整理しています。
LSEGの用語集には、KYCはオンボーディング後も継続的に実施される必要があり、顧客活動を継続的に監視することで異常な行動パターンを検知しやすくなる、とも書かれています。
eKYCとは:オンラインで行うKYC
eKYCは「electronic Know Your Customer」の略で、TRUSTDOCKは「オンライン(対面や郵送ではない方法)でKYCをすること」と定義しています。「オンライン本人確認」と表現されることもあります。
LSEGの用語集は、eKYCがテクノロジーを活用して遠隔での本人確認を可能にし、確認プロセスをオンラインのプラットフォーム上で完結できると説明しています。
