目次
  1. ブロックチェーンとは?一言でいうと「改ざんに強い分散型台帳」
    1. ブロックを鎖のようにつないで記録する技術
    2. ブロックチェーンの4つの特徴
  2. ブロックチェーンの仕組みを3つのキーワードで理解する
    1. P2Pネットワーク:特定のサーバーに頼らずつながる
    2. ハッシュ:1か所の改ざんもすぐ見つかる理由
    3. 合意形成(コンセンサスアルゴリズム):全員で取引をチェックする
    4. 電子署名:なりすましを防ぐ鍵のペア
  3. ブロックチェーンとビットコイン・暗号資産の関係
    1. ブロックチェーンは「技術」、ビットコインはその上の「仕組み」
    2. ブロックチェーン=ビットコインではない理由
  4. 従来のデータベースとの違い
    1. 管理者がいる集中管理型と、全員で持つ分散型
    2. 比較表:クラウドのデータベースとブロックチェーン
  5. ブロックチェーンの種類:パブリック・プライベート・コンソーシアム
    1. 3種類の違いと向いている場面
  6. ブロックチェーンのメリット
  7. ブロックチェーンのデメリット・課題
    1. 処理速度とデータ量の問題
    2. 51%攻撃のリスクと環境負荷
    3. 法整備がまだ途上であること
  8. スマートコントラクトとは?取引を自動で進める仕組み
    1. ブロックに格納されたプログラムのこと
    2. 「契約の自動執行」と説明されるときの注意点
  9. ブロックチェーンの活用事例
    1. 金融分野:送金・セキュリティトークン・ステーブルコイン
    2. 行政・自治体:エストニアの電子政府と飯塚市の取り組み
    3. 食品・アート・エンタメなど身近な分野
  10. ブロックチェーンの今後の展望・将来性
    1. 国内で進む活用の推進と利用者保護の規制整備
    2. 伸びしろと、実証段階の課題
  11. まとめ:ブロックチェーンを理解する3つのポイント

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ブロックチェーンとは?一言でいうと「改ざんに強い分散型台帳」

ブロックチェーンとは、取引の記録を「ブロック」という単位でまとめ、鎖のようにつないで、多くの参加者で分け合って保管する技術です。一言でいえば「改ざんに強い分散型台帳」と説明されます。

暗号資産(仮想通貨)のニュースや取引所の説明で、この言葉を何度も見かけた方は多いと思います。ただ、説明に専門用語が並ぶため、結局何の技術なのか分からないままになりがちです。

この記事では、専門知識がない方でも順番に理解できるように、仕組み、ビットコインとの関係、従来のデータベースとの違い、メリットと課題、使われ方、今後の見通しまでをやさしく整理します。

はじめに全体像を押さえておくと、読み進めやすくなります。ブロックチェーンの要点は、次の3つに集約できます。

  • 取引の記録をブロックにまとめ、時間順に鎖のようにつなぐ
  • 同じ記録を多くの参加者が持ち合い、特定の管理者に頼らない
  • 暗号技術と参加者どうしのチェックで、書き換えを見つけやすくする

ブロックを鎖のようにつないで記録する技術

「台帳」とは、お金のやりとりや大切な事柄を書きとめた帳簿のことです。会計帳簿や登記簿などを思い浮かべると分かりやすいでしょう。

ブロックチェーンでは、この台帳に書く取引をいくつかまとめて「ブロック」にします。そのブロックを時間の順に次々とつないでいくので、「ブロックの鎖」という名前が付いています。

各ブロックには、直前のブロックの内容を表す「ハッシュ値」という目印が書き込まれています。この目印があるおかげで、前のブロックが少しでも書き換えられると、鎖のつながりに食い違いが出ます。

また、同じ台帳が1か所ではなく、ネットワーク上の多くのコンピューターに分散して保管されます。そのため「分散型台帳技術」とも呼ばれます。

ブロックチェーンは、情報を記録するデータベース技術の一種とされています。ただし、普通のデータベースとは、管理の考え方が大きく異なります。その違いは後の章で詳しく見ていきます。

ブロックチェーンの4つの特徴

ブロックチェーンの特徴は、大きく4つにまとめられます。まずは表で全体を確認しましょう。

特徴 ひとことで言うと
改ざんが非常に難しい 過去の記録を書き換えると、鎖のつながりに食い違いが出て見つかりやすい
システムダウンが起きにくい 一部のコンピューターが止まっても、残りの参加者が記録を持ち続ける
取引の記録を消せない 一度記録された取引は、証拠として残り続ける
自律分散システム 中央の管理者に頼らず、参加者それぞれが記録を持って動かす

1つ目の「改ざんの難しさ」は、ハッシュや電子署名といった暗号技術によって支えられています。データが書き換えられても、容易に検出できる点がポイントです。

2つ目の「止まりにくさ」は、多くの参加者が全員の取引履歴のコピーを持っていることから生まれます。コピーが分散しているので、一部が故障しても全体は動き続けます。

3つ目と4つ目は、管理者がいない構造と深く関わっています。全員が自分で記録を持ち続けることを「自律分散」と呼び、ブロックチェーンの大きな特徴のひとつです。

なお、ブロックチェーンの定義は、現在でも一つに定まっているわけではありません。時と場合、人によって少しずつ違う意味で使われることがあるため、ニュースを読むときは「どんな意味で使っているか」に注意すると理解しやすくなります。

▶ 動画で確認:4分で見るブロックチェーンの特徴

キノコードが図解で、分散型・P2Pの仕組みや、ゼロダウンタイム、信頼性、低コストといった特徴を4分で整理しています。処理速度という課題にも触れているので、4つの特徴をおさらいする動画としてこの節に置きます。

出典:キノコード / AI・プログラミング学習チャンネル「ブロックチェーン とは?|仕組みや特徴などをまじえて、図解を使って4分でわかりやすく解説」(YouTube・約4分)

ブロックチェーンの仕組みを3つのキーワードで理解する

ブロックチェーンは、まったく新しい魔法のような技術ではありません。もともとあった技術を組み合わせて作られた仕組みです。

中心になるのは「P2Pネットワーク」「ハッシュ」「合意形成(コンセンサスアルゴリズム)」の3つのキーワードです。ここに「電子署名」を加えると、全体像がつかみやすくなります。

インターネット上で通貨のような価値をやりとりするには、「なりすましや改ざんをどう防ぐか」と「同じお金を二重に使う不正をどう防ぐか」という2つの課題がありました。ブロックチェーンは、これらの技術の組み合わせで課題に対応しています。

以下で、一つずつ順番に見ていきましょう。

P2Pネットワーク:特定のサーバーに頼らずつながる

P2Pは「ピア・ツー・ピア」の略で、対等な立場のコンピューターどうしが直接つながる方式です。「ピア」には「仲間」「同僚」という意味があります。

よくあるインターネットのサービスでは、中心にサーバーがあり、利用者がそこへアクセスします。この形では、サーバーが故障すると、サービス全体が止まってしまうことがあります。

P2Pネットワークには特別なサーバーがなく、すべての参加者が同じ立場でデータを持ち合います。そのため、あるコンピューターが故障しても、システム全体は動き続けます。

ブロックチェーンが止まりにくいのは、このP2Pの考え方を使っているからです。P2Pそのものは以前からある技術で、ブロックチェーンはそれを土台に組み込んでいます。

ハッシュ:1か所の改ざんもすぐ見つかる理由

ハッシュとは、データから「そのデータ固有の値」を計算して取り出す仕組みです。計算に使う式を「ハッシュ関数」、得られた値を「ハッシュ値」と呼びます。

ハッシュ値には、いくつか大切な性質があります。

  • 同じデータなら、いつ、どこで、誰が計算しても同じハッシュ値になる
  • 元のデータの量にかかわらず、いつも一定の桁数の値になる
  • ハッシュ値から、元のデータを割り出すことはできない

これは、データの「指紋」のようなものと考えると分かりやすいでしょう。データが少しでも変わると、指紋も別のものになります。

ブロックチェーンでは、各ブロックに直前のブロックの内容を表すハッシュ値が書き込まれています。もし過去のブロックを書き換えると、そのブロックのハッシュ値が変わり、次のブロックに書かれた値と合わなくなります。

食い違いをごまかすには、それ以降のブロックも全部書き換えなければなりません。このため、過去の記録を書き換えるには、あとに続くすべての記録まで変える必要があるのです。

鎖のように前後がつながっているからこそ、1か所の変更も見つかりやすくなります。これが「改ざんに強い」と言われる大きな理由です。

▶ 動画で確認:4分アニメでハッシュの鎖をつかむ

株式会社gritの4分アニメ解説で、取引ボードをブロックにして前日のハッシュを書き込み、鎖につなぐ流れを図で追えます。1か所書き換えるとハッシュが変わってつながらなくなる様子が、この節の説明の理解を助けます。

出典:grit「【4分アニメ解説】ブロックチェーン原理だけ〜web3すっきり理解〜」(YouTube・約4分)

合意形成(コンセンサスアルゴリズム):全員で取引をチェックする

ブロックチェーンには、取引を承認してくれる中央の管理者がいません。その代わりに、参加者どうしで「この取引は正しい」と合意する決まりを使います。

この決まりを「合意形成」、そのための手順を「コンセンサスアルゴリズム」と呼びます。取引があると、参加者がそれが正規のものかをチェックし、認められたものだけがブロックに書き込まれます。

たとえばビットコインでは、「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」という方式が採用されています。参加者の中に不正を行う人がある程度いても、正常な合意ができるように工夫されています。

取引の履歴は、いつも参加者どうしが見張っている状態にあります。「みんなで帳簿を見合って、おかしな書き込みを通さない」というイメージを持つと、理解しやすいでしょう。

電子署名:なりすましを防ぐ鍵のペア

電子署名は、「この取引は本当に本人が行ったものか」を確かめるための仕組みです。ここでは「秘密鍵」と「公開鍵」という、ペアになった2つの鍵が登場します。

データを作る人は、自分だけが持つ秘密鍵で署名をしてから、データを送ります。受け取る側は、事前に受け取っていた公開鍵を使って、その署名が正しいかを確認します。

署名が合っていれば、その人が作ったデータだと確かめられます。第三者が本人のふりをして取引を作っても、署名が合わないので見破られます。

ブロックチェーンのデータには、必ず電子署名が付けられます。秘密鍵は他人に知られないよう、厳重に管理することが大切です。

POINT P2Pで「止まりにくく」、ハッシュで「書き換えを見つけやすく」、合意形成で「全員が確認」し、電子署名で「なりすましを防ぐ」。この組み合わせがブロックチェーンの土台です。

ブロックチェーンとビットコイン・暗号資産の関係

ブロックチェーンとビットコイン・暗号資産の関係

ブロックチェーンの話題は、たいていビットコインや暗号資産とセットで出てきます。そのため、両者を同じものだと思ってしまう方も少なくありません。

実際、ブロックチェーンはビットコインを支える技術として世に登場しました。コンセプトが発表されたのが2008年、ビットコインの取引が始まったのが2009年とされています。

ビットコインの生みの親と言われるのが「サトシ・ナカモト」氏です。既存の技術を組み合わせることで、特定の管理者に頼らず取引を記録する新しい仕組みを生み出したと説明されています。

ここでは、両者の関係を整理して、混同しやすい点をほどいていきます。

ブロックチェーンは「技術」、ビットコインはその上の「仕組み」

関係を一言でまとめると、ブロックチェーンは「技術」であり、ビットコインはその技術を使った代表的な「仕組み」です。

ビットコインのような暗号資産の多くは、銀行などの第三者を介さず、ユーザーどうしが直接取引をします。その取引履歴を記録して守るために、ブロックチェーンが使われています。

ビットコインは、ブロックチェーンの上でやりとりされる通貨です。同時に、ブロックチェーンの仕組みを維持する参加者への報酬という役割も持っています。

報酬がなければ、参加しようという人が現れず、仕組みを保ち続けることが難しくなるかもしれません。ビットコインは、ブロックチェーン技術が続いていくための支えにもなっているわけです。

ブロックチェーン=ビットコインではない理由

ブロックチェーンとビットコインは、深く関わっていますが、イコールではありません。理由は主に3つあります。

  1. ビットコインは最初に登場した暗号資産ですが、現在は他にも多くの暗号資産がある
  2. ブロックチェーンは、通貨以外の記録にも使える汎用的な技術である
  3. どの暗号資産も「ブロックチェーンは技術、暗号資産はその上に成り立つ仕組み」という関係は共通している

たとえば、食品の産地の記録、デジタル作品の証明書、契約の手続きなど、お金以外の用途にもブロックチェーンは応用されています。

ニュースで「ブロックチェーン」と出てきたら、「暗号資産の話なのか、記録の仕組みの話なのか」を切り分けて読むと、混乱しにくくなります。

なお、暗号資産の取引にはリスクもあります。この記事は技術の仕組みを説明するもので、特定の暗号資産や取引の判断をすすめるものではありません。

従来のデータベースとの違い

ここまで読んで、「結局、クラウドのデータベースとあまり変わらないのでは?」と感じた方もいるかもしれません。その感覚は、半分は正しく、半分は違います。

クラウド上のデータベースも、複数のコンピューターにデータを分けて持ち、バックアップを取っています。エラーや改ざんがあっても、修復できる仕組みがあります。大手のサービスなら、安定性も高いでしょう。

では何が違うのか。いちばんの違いは、「誰が管理しているか」にあります。

管理者がいる集中管理型と、全員で持つ分散型

従来のデータベースは、サービスを提供する管理者が全体を運営する「集中管理型」です。会計帳簿や住民基本台帳、登記簿のように、企業や自治体、国といった特定の組織が管理する形が代表的です。

この形では、管理者の判断でサービスを止めたり、データを消したりすることが、仕組みの上では可能です。また、管理者に悪意があれば、中身を書き換えられる可能性もゼロではありません。

一方、ブロックチェーンは、特定の管理者を置かずに、参加者全員が台帳の全部または一部を持ち合う「分散型」です。誰が、いつ、どんな情報を書き込んだかが共有され、勝手な書き換えを防ぎやすくなります。

ブロックチェーンでは、サービスの提供者であっても、記録されたデータを書き換えたり消したりすることはできない設計になっています。参加者が自分の取引履歴を消すこともできません。

この性質があるため、まだ知名度の低いサービス提供者でも、利用者が安心して取引を任せやすくなると言われています。

▶ 動画で確認:集中管理型と分散型の違いを解説

中央集権型では管理者の都合でデータが消えたり、悪意があれば改ざんされたりしうる一方、ブロックチェーンは提供者でも書き換えにくい点を図で説明しています。この節の集中管理型と分散型の対比を映像で補えます。

出典:ITを分かりやすく解説「ブロックチェーンとは?ブロックチェーンの仕組みを分かりやすく解説」(YouTube・約10分)

比較表:クラウドのデータベースとブロックチェーン

違いを表にまとめました。どちらが優れているというより、目的に合わせて選ぶものと考えてください。

比べる点 クラウドのデータベース ブロックチェーン
管理のしかた 管理者が全体を運営する集中管理型 参加者全員で持ち合う分散型
データの持ち方 複数のコンピューターに分けて保管し、バックアップも取る 参加者が同じ取引履歴のコピーを持ち、常に同期する
データの書き換え・削除 管理者が行おうと思えば行える 提供者でも記録を書き換えたり消したりしにくい
止まったときの影響 管理者がサービスを止めると影響を受ける 一部が止まっても、残りの参加者が記録を保持する
主な課題 管理者への信頼が前提になる 処理速度やデータ量、法整備などに課題がある

この表のとおり、ブロックチェーンは「管理者を信頼しなくても記録が守られやすい」点に強みがあります。一方で、処理の速さや手軽さでは、従来の仕組みに分があります。

「全員で見張る」仕組みには、それなりの手間がかかるためです。目的に合うかどうかを考えることが、使い分けのコツです。

たとえば、管理者がしっかり責任を持てる社内の記録なら、従来のデータベースで十分なことも多いでしょう。複数の組織が互いを信頼しきれない状況で記録を共有したい場合などに、ブロックチェーンが検討されます。

ブロックチェーンの種類:パブリック・プライベート・コンソーシアム

ブロックチェーンは、誰が参加できるか、誰が管理するかによって、大きく3種類に分けられます。

「ブロックチェーン」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、ビットコインのように誰でも参加できる形です。しかし、実際には、企業や組織の中で使うタイプもあります。

種類の違いを知っておくと、ニュースで「パブリックチェーン」「プライベートチェーン」といった言葉が出てきたときも、迷わずに読めます。

3種類の違いと向いている場面

まず、3種類の特徴を表で見てみましょう。

種類 管理者 参加できる人 特徴 向いている場面
パブリックチェーン いない 不特定多数 取引履歴が公開され透明性が高い。承認に一定数以上の合意が必要なので時間がかかる ビットコインなどの暗号資産
プライベートチェーン 単独の管理者がいる 許可された人だけ 利用者が限られるので承認がスムーズ。中央集権的な要素がある 企業内・組織内での履歴管理
コンソーシアムチェーン 複数の管理者がいる 許可された人だけ パブリックとプライベートの中間型 複数の企業や組織での履歴管理

パブリックチェーンは、誰でも参加できて透明性が高い反面、多くの人の合意が要るため処理に時間がかかりやすい形です。

プライベートチェーンは、参加者を絞るぶん承認が早くなります。その代わり、管理者がいるので、透明性は少し下がります。

コンソーシアムチェーンは、複数の組織が共同で運営する形です。取引先どうしで同じ記録を共有したい、といった場面に合います。

種類を選ぶときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 参加者は誰でもよいのか、限られた人だけにしたいのか
  2. 記録をどこまで公開したいのか
  3. 処理の速さと透明性のどちらを重視するのか
  4. 管理者は1つの組織か、複数の組織か

この4つを順に確かめると、自分の目的にどのタイプが近いかが見えてきます。

ブロックチェーンのメリット

ブロックチェーンのメリット

ここからは、ブロックチェーンを使う良い点を整理します。技術が注目される理由は、主に次のような長所にあります。

まず挙げられるのが、情報の正確性と信頼性の高さです。各ブロックにハッシュ値があり、過去のデータが書き換えられると値が変わって、すぐに分かります。

書き換えを通すには、そこにつながるすべてのデータを変える必要があります。この手間の大きさが、改ざんの難しさにつながり、利用者の安心感を支えています。

次に、システム全体の安定性があります。分散型の仕組みなので、一部のサーバーが止まっても、全体への影響を小さくできます。

3つ目は、コストの面です。中央で大がかりなシステムを管理する必要がなく、仲介役も要らない場合があるため、取引にかかるコストを抑えられる可能性があります。P2Pの仕組みを使うため、高性能なサーバーが不要で、運用費を安く抑えやすいとも言われています。

4つ目は、透明性とトレーサビリティです。取引が時刻つきで永続的に記録されるため、参加者は取引の履歴全体をさかのぼって確認できます。モノの出どころを追う「トレーサビリティ」にも向いています。

5つ目は、効率化と自動化です。紙を使った手続きや、複数の台帳を突き合わせる作業を減らせる場合があります。スマートコントラクトを組み合わせれば、条件が満たされたときに次の処理を自動で進めることもできます。

このようにブロックチェーンには多くの長所があります。ただし、どんな場面でも万能というわけではありません。次の章では、弱点や課題も確認しましょう。

ブロックチェーンのデメリット・課題

良い面だけでなく、課題も知っておくと、ニュースや新しいサービスを冷静に見られます。ここでは代表的な3つを取り上げます。

なお、これらは「だから使えない」という意味ではありません。現在、改善や工夫が進められている点も多くあります。

課題は、技術的なもの、仕組み上のもの、社会の制度に関わるものに分けると整理しやすくなります。

処理速度とデータ量の問題

ブロックチェーンは、取引が増えるほど、記録するデータが積み重なって増えていきます。取引が増えると、通信量やデータ量も増え、処理しきれなくなるおそれがあると指摘されています。

また、パブリックチェーンのように参加者が多い形では、取引の承認に一定数以上の合意が必要です。そのため、処理に時間がかかり、速度が遅くなりやすいという課題があります。

こうした、利用が増えたときに処理が追いつかなくなる恐れは、ブロックチェーンの課題のひとつです。改善に向けた研究や工夫が進められている分野です。

51%攻撃のリスクと環境負荷

ビットコインのようなブロックチェーンでは、「マイニング」という作業で取引が記録され、新しいブロックが作られます。この作業を行った人は、条件を満たすと暗号資産を受け取れます。

もし悪意のある集団や個人が、全体の50%を超える計算をまとめて行えば、不正な取引を承認させてしまうおそれがあります。これが「51%攻撃」です。

このリスクを防ぐ決定的な方法は今のところないとされますが、実際に起きる可能性は低いと説明されています。

もうひとつの課題は、環境への負荷です。大量の計算を行う方式では、電力消費が大きくなりやすく、環境問題として指摘されることがあります。

さらに、ブロックチェーンはオープンで管理者がいなく、記録を削除できないため、悪意のある第三者から攻撃を受けやすいといった指摘もあります。仕組みによって注意点が異なるので、一律に判断せず、種類ごとに考えることが大切です。

法整備がまだ途上であること

ブロックチェーンは、比較的新しい技術です。そのため、関連する法律やルールの整備が、技術の進み方に追いついていない面があります。

利用者を守るためのルールづくりは進められていますが、まだ途上の部分もあります。新しいサービスを使うときは、仕組みやリスクを自分で確かめる姿勢が大切です。

また、企業が導入する場合も、技術の知識や運用のノウハウが必要になります。人材の確保など、実際の運用面の課題があることも覚えておきましょう。

POINT 主な課題は「処理速度とデータ量」「51%攻撃や環境負荷」「法整備」の3つ。仕組みの強みと弱みをセットで知っておくことが大切です。

スマートコントラクトとは?取引を自動で進める仕組み

ブロックチェーンの話では、「スマートコントラクト」という言葉もよく出てきます。直訳すると「賢い契約」ですが、中身を知ると、意外とシンプルな考え方です。

ブロックチェーンの上で、決められた条件が満たされたら、決められた処理が自動で進む。そんな使い方が可能になります。

取引の手間を減らせることから、効率化の手段として注目されています。一方で、言葉のイメージが先行して誤解されやすい面もあります。

ブロックに格納されたプログラムのこと

国際的に共通する意味でのスマートコントラクトとは、ブロックチェーンのブロックに格納されたコンピュータープログラムのことです。

そのプログラムが動いた結果も、同じブロックチェーンに記録されます。ブロックに残るため、ネットワークの参加者は誰でも内容を確認して使うことができます。

たとえば、保険の分野では、必要な書類がそろったら、請求の処理と支払いを自動で進める、といった使い方が考えられています。人の手による確認や第三者への依存を減らせる点が、長所として挙げられます。

金融サービスの機能をスマートコントラクトとして作り、取引を行う仕組みは「分散型金融(DeFi)」と呼ばれます。

「契約の自動執行」と説明されるときの注意点

スマートコントラクトは、よく「契約の自動執行」と説明されます。しかし、ブロックチェーンの文脈での意味としては、この説明には誤解を招く面があると指摘されています。

理由は、自動で実行される仕組みは、ブロックチェーンやスマートコントラクトでなくても実現できるからです。

たとえば、毎月決まった日に決まった額を送金する「定額自動送金」のようなサービスは、ブロックチェーンを使わなくても作れます。「自動で動く」ことと「スマートコントラクトである」ことは、イコールではありません。

見分けるポイントは、次の2点です。

  • プログラムがブロックチェーンのブロックに格納されているか
  • 実行した結果が、そのブロックチェーンに記録されているか

「自動」という言葉を見かけたら、ブロックチェーンが本当に使われているのかを、落ち着いて確かめるとよいでしょう。

ブロックチェーンの活用事例

ブロックチェーンの活用事例

ブロックチェーンは、暗号資産のためだけの技術ではありません。取引の記録を「正しいまま残す」ことが役に立つ場面で、さまざまな活用や実証実験が進んでいます。

ここでは、金融、行政・自治体、そして身近な分野の3つに分けて、使われ方を見ていきます。

なお、実証実験の段階のものも多く含まれています。「すでに広く普及している」と受け取らず、取り組みの途中経過として読んでください。

金融分野:送金・セキュリティトークン・ステーブルコイン

金融は、ブロックチェーンの活用や実証が始まっている分野のひとつです。暗号資産による送金はすでに行われており、24時間動くことから、外国為替に関わる取引でも使われています。

有価証券をデジタルデータにしてブロックチェーンで管理する取り組みもあります。安全性を保ちつつ、運用のコストや取引にかかる手数料を軽くできないか、模索されています。

ブロックチェーンの技術を使って、権利の移転や記録を行う、デジタル化された有価証券は「セキュリティトークン」と呼ばれます。国内でも、その二次流通市場の運営が始まったと紹介されています。

暗号資産の弱点のひとつに、価格の変動が大きいことが挙げられます。その点を和らげるために設計されたのが「ステーブルコイン」という種類の暗号資産です。

金融分野では、貿易金融や清算・決済、融資などの業務を効率化できる可能性が語られています。一方で、価格変動などのリスクもあるため、技術の仕組みと、個々の商品のリスクは分けて考えることが大切です。

行政・自治体:エストニアの電子政府と飯塚市の取り組み

行政の分野でも、ブロックチェーンへの関心が高まっています。改ざんしにくい記録は、公的な手続きの信頼性を高めると期待されているためです。

よく例に挙がるのが、北ヨーロッパのエストニアです。1991年にソビエト連邦から独立した国で、官民を問わずITを積極的に活用し、「e-Estonia(電子国家)」を掲げています。

エストニアでは、納税、投票、結婚や離婚の手続き、土地や法人の登記、パスポートの発行までが、インターネットで完結すると紹介されています。行政サービス全体の99%がインターネットで完結するという説明もあります。

さらに、エストニアを訪れたことがない外国人でも、オンラインで「電子居住者」として登録を申請できます。この制度が、外国人起業家を呼び込む鍵になっているとされます。

エストニアの電子政府は「利便性」と「透明性」を方針とし、行政手続きの記録にブロックチェーンを活用していると言われています。世界でもっとも早く行政サービスに導入した国のひとつとして注目されています。

日本の自治体にも、動きがあります。福岡県の飯塚市は、令和3年に「飯塚市ブロックチェーン推進宣言」を出しました。

飯塚市では、行政証明書を電子で発行する実証実験や、大学・企業と連携した研究プロジェクトなどを進めていると紹介されています。身近な役所の手続きが、少しずつ変わっていくかもしれません。

食品・アート・エンタメなど身近な分野

身近な暮らしに近い分野でも、活用が進んでいます。主な例を整理しました。

分野 どう使われているか
食品 生産から店頭に並ぶまでの流れを、改ざんできない形で記録し、消費者が確認できるようにする(トレーサビリティ)
アート 作品の真正性や信頼性を保つ証明書にブロックチェーンを使う
エンターテインメント ゲームやチケットの販売・入場管理などに使われる
電力 売る側と買う側を直接つなぐ「P2P電力取引」で実証実験が行われている

食品では、産地や流通経路を追えるようにすることで、消費者の安心感を高める狙いがあります。万が一の際に、出どころをたどる手がかりにもなります。

エンターテインメントでは、2017年に登場した「CryptoKitties」というゲームが知られています。イーサリアムのブロックチェーン上で、仮想の猫を育てたり、交配させたり、売買したりできるとして話題になりました。

音楽ライブのチケット販売では、購入から入場までを管理し、規約で禁止された譲渡を防ぐ使い方が紹介されています。

こうした例に共通するのは、「記録が正しく残ること」に価値がある点です。自分の身の回りで、記録の信頼性が大切な場面を考えてみると、活用のイメージが湧きやすくなります。

ブロックチェーンの今後の展望・将来性

ブロックチェーンは、これからどうなっていくのでしょうか。ここでは、現時点でわかっている範囲で、見通しを整理します。

将来の動きを断定することはできません。ここで述べるのは、あくまで「期待されていること」と「まだ課題が残ること」です。

将来性を考えるときは、期待だけでなく、実際の進み具合も合わせて見ることが大切です。

国内で進む活用の推進と利用者保護の規制整備

日本では、経済産業省や総務省が、ブロックチェーンの活用を積極的に進めています。あらゆる産業分野で、次世代の基盤になる可能性があるとして、調査も行われています。

一方で、金融庁は、利用者を守るためのルール整備を進めています。技術の活用と、利用者の保護を、両方進めようとする流れと言えます。

将来は、パソコンやスマートフォンだけでなく、自家用車や自宅までもがブロックチェーンにつながり、便利なサービスが使えるようになるかもしれない、という見方も紹介されています。

買い物、行政手続き、契約や取引など、幅広い場面で、より安全で効率的に使えるようになる可能性があります。

伸びしろと、実証段階の課題

信頼性の高いシステムを、比較的低いコストで作れる点は、ブロックチェーンの強みです。そのため、幅広い分野への応用が期待されています。

ただし、まだ実証や検証の段階にある取り組みも多いのが実情です。処理速度やデータ量、環境負荷、法整備など、先ほど見た課題の解決が、広がりを左右します。

この技術が、あって当たり前のインフラになるかどうかは、これからの取り組み次第です。伸びしろの大きい技術だと言われる一方で、期待が先行しすぎないよう、冷静に見守る姿勢も必要です。

ニュースを読むときのチェックリストを用意しました。新しい話題に出会ったときの目安にしてください。

  • ブロックチェーンが使われているのは、「何の記録」なのか
  • パブリック、プライベート、コンソーシアムのどのタイプか
  • 実証実験の段階か、実際にサービスとして使われているか
  • 「自動」と書かれていても、スマートコントラクトを使っているか
  • 暗号資産の価格の話と、技術の話が混ざっていないか

まとめ:ブロックチェーンを理解する3つのポイント

ここまで、ブロックチェーンの基本から、仕組み、課題、使い道、今後までを見てきました。最後に、押さえておきたいポイントを3つにまとめます。

1つ目は、ブロックチェーンは「改ざんに強い分散型台帳」だということです。取引の記録をブロックにまとめて鎖のようにつなぎ、多くの参加者で持ち合うことで、書き換えを見つけやすく、止まりにくい仕組みになっています。

2つ目は、仕組みは既存の技術の組み合わせだということです。P2Pネットワーク、ハッシュ、合意形成、電子署名がそれぞれの役割を果たし、管理者がいなくても記録の信頼を保てるように工夫されています。

3つ目は、ビットコインとは別物で、長所と課題の両方があるということです。ブロックチェーンは「技術」、ビットコインはその上に成り立つ「仕組み」です。金融、行政、食品など幅広い場面で使われる一方、処理速度、51%攻撃、環境負荷、法整備といった課題も残っています。

POINT ニュースで「ブロックチェーン」を見かけたら、「何を記録する話か」「誰が管理するタイプか」「実証段階か」の3つを確かめると、内容を落ち着いて理解できます。

専門用語が多く、難しく感じやすい技術ですが、「みんなで同じ帳簿を持ち、書き換えを見張り合う仕組み」と考えると、全体像がつかみやすくなります。

この記事が、ニュースや解説を読むときの土台になれば幸いです。気になる分野が見つかったら、公的機関などの情報もあわせて確認してみてください。





最後までお読み頂いてありがとうございました。