分散型台帳とは?特定の帳簿管理者に依存せず、帳簿を分散して管理する仕組み
分散型台帳技術(DLT)は、既存の暗号技術などを組み合わせることにより、特定の帳簿管理者に依存することなく、分散型の構造の下で帳簿を管理する仕組みとされています。日本銀行の決済システムレポートは、ブロックチェーン・分散型台帳技術をこのように説明しています(日本銀行「決済システムレポート・フィンテック特集号」(2018年2月))。
この記事では、意味、仕組み、許可型と無許可型の違い、金融分野での利用例を順に整理します。出典は日本銀行の資料と金融庁の研究会の議事録に限っています(2026年10月27日確認)。
分散型台帳(DLT)の意味
分散型台帳技術は、英語の Distributed Ledger Technology を略して DLT と呼ばれます(日本銀行ワーキングペーパー「ブロックチェーン・分散型台帳技術の法と経済学」(2017年3月))。このワーキングペーパーは、内容と意見が執筆者ら個人に属するもので、日本銀行の公式見解を示すものではないとしています。
同ワーキングペーパーは、ブロックチェーンや DLT を、帳簿の管理を特定の主体に委ねる「集中型」の仕組みに代わり、各参加者がインターネット上などで基本的に同じ帳簿を共有する「分散型」の仕組みによって、各種の資産・権利の所在や移転の記録を可能とする技術と説明しています。
金融安定理事会(FSB)の2019年6月のレポートでは、分散型という用語は多義的に用いられ、議論には定義づけが必要とされています。意思決定の分散化、リスクテイキングの分散化、記録保持の分散化といった観点で、それぞれ議論していく必要があるのではないか、と事務局が紹介しています(金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」第2回(令和3年9月15日)議事録)。
ブロックチェーンとの関係
同ワーキングペーパーは、分散型台帳技術(DLT)とブロックチェーンについて、必ずしも確立された定義があるわけではないとしています。そのうえで、一般には、DLT は多数の参加者が、帳簿間の不一致や二重譲渡などを避けながら同じ帳簿を共有する技術を指し、ブロックチェーンはそのための技術の一つを指すことが多く、その意味で DLT の方が若干広い概念として使われることが多いと説明しています。
日本銀行の決済システムレポートも、ブロックチェーンは仮想通貨ビットコイン等の技術基盤を狭義に指す用語として使われる一方、分散型台帳技術はブロックチェーンを含めて、帳簿を分散的に管理することを可能にする技術全般を表す用語として使われることが多いとしています(決済システムレポート・フィンテック特集号)。
集中型の帳簿管理との違い
同ワーキングペーパーは、高度化する金融取引への対応として、証券のブックエントリー化のように、データをデジタル化したうえで、電子的帳簿の管理を特定の主体に集約する「集中型」の対応が採られることが多かったとしています。
同ワーキングペーパーの図表1では、集中型は「参加者は自らの帳簿を中央の帳簿に合わせる」、ブロックチェーン・DLT による分散型は「参加者は同じ帳簿を共有」と対比されています。
分散型台帳の仕組み

日本銀行の決済システムレポートは、ビットコインに用いられているブロックチェーンを例に、仕組みを次のように説明しています(決済システムレポート・フィンテック特集号)。
- ビットコインの保有の履歴は、すべての参加者に共有される
- 参加者は一定量の取引を「ブロック」に入れ、各ブロックに前のブロックの要約情報を含むデータ(ハッシュ値)を含めて、ブロックを「チェーン」状に連ねた形式で取引を記録する
- 新たなブロックの生成には、一定の条件を満たすハッシュ値が必要となるため、これを得るための総当たり式の「計算競争」(「マイニング」)が行われる
マイニングによって帳簿の正しさを担保する仕組み
最も早く計算を終えた参加者には、報酬として新たなビットコインが付与されます。
同レポートは、過去の取引履歴をさかのぼって改ざんできる計算能力を備えた主体がいても、改ざんに使うよりマイニングに使った方が得になる構造を作り、経済的なインセンティブを通じて帳簿の正しさを担保する仕組みを作り出したことが、ブロックチェーンの特徴であるとしています。
帳簿の正しさを担保する方法の違い
同レポートは、その後開発された技術の中には、ビットコインのような「不特定多数による計算競争」によって帳簿の正しさを担保する代わりに、最初に特定の参加メンバーを選んだうえで、このメンバー間での情報のやり取りによって帳簿の正しさを担保するものなど、さまざまなスタイルのものが生まれているとしています。
許可型と無許可型の2つのタイプ

金融庁の研究会の第3回の議事録(事務局の説明)では、分散型台帳は「パーミッション型」「パーミッションレス型」と表記されています。この記事では、それぞれ許可型・無許可型と書きます。
研究会の第3回(令和3年10月6日)で、事務局は、分散型台帳を用いた金融サービスについて、パーミッション型の分散型台帳を用いたものと、パーミッションレス型の分散型台帳を用いたものの二つのパターンに分けられるのではないか、と説明しました(金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」第3回議事録)。
参加やコンセンサスへの参加に制限があるかどうか
第3回で事務局は、2つのタイプを次のように説明しました(金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」第3回議事録)。
| 項目 | 許可型(パーミッション型) | 無許可型(パーミッションレス型) |
|---|---|---|
| ネットワークへの参加 | ゲートキーパーや一定の手続に基づく | 自由 |
| コンセンサスプロセスへの参加 | 事前の取決めがあり、制限されている | 特段の制約はない(ビットコインではマイニング) |
許可型の分散型台帳は、既存の中央集権型の金融サービスと同様の構造と言えるのではないか、という説明もありました(金融庁 第3回議事録)。
日本銀行の決済システムレポートは、ビットコインを支えるブロックチェーンのように取引検証のプロセスに誰でも参加できるものを「パブリック型」、取引検証のプロセスへの参加メンバーが当初から限定されていたり、ネットワークを管理・運営する主体が想定されていたりするものを「プライベート型」あるいは「コンソーシアム型」と呼んでいます(決済システムレポート・フィンテック特集号)。
金融分野での分散型台帳の使われ方

金融分野での利用については、金融庁の「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の議事録に、いくつかの例が示されています。以下は、第2回(令和3年9月15日)、第3回(令和3年10月6日)、第11回(令和5年6月6日)の議事録で示された内容を紹介するもので、現在の状況を示すものではありません。
研究会の第1回では、分散型台帳技術の使われ方として、ペイメント、インベストメント、コラテラルに分けられるのではないか、という指摘がありました(金融庁 第2回議事録で紹介された第1回会合での主な指摘事項)。
第3回で事務局が示した、パーミッション型の分散型台帳のユースケース
- 証券ポストトレード領域における情報共有を円滑にする取り組み
- セキュリティ・トークンの発行・管理のプラットフォームとして使えないかという動き
- 企業間決済に用いる米ドルにペッグしたステーブルコインについて、実証実験をしている米系の金融機関があること
(金融庁 第3回議事録。事務局が公表資料等から作成した例)
FSBの2019年6月のレポートでは、分散型金融技術を使用した金融サービスの例として、支払、決済、貿易金融、情報の共有の効率化、資本市場、レンディングなどでの活用が指摘されたと紹介されています(金融庁 第2回議事録)。
セキュリティトークン(ST)が第11回の研究会で取り上げられました。STという言葉は明確に定義されているわけではありません(日本STO協会の説明)。基本的には、有価証券とみなされる権利のうち、トークンに表示された財産的価値を分散型台帳技術を用いて取引等を行うもの、と一般的に定義されているとのことです(金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」第11回(令和5年6月6日)議事録)。

